12月に行われたアーティスト・プログラム in 神津島/テニスコーツ『つくって、うたって、あるいて、おどって、大漁だ‼︎ くると冬まつり 2022』 今回は拠点スタッフの4名にそれぞれの視点でレポートを書いていだたきました。
第1弾みきさんのレポートはこちら
第2弾まいさんのレポートはこちら
第3弾まなみさんのレポートはこちら

最終回の第4弾は、木曜日スタッフのはるのさんです。はるのさんは今回、溢れるアイディアを携え、企画運営の中心メンバーとして「くると冬まつり」を作ってくださいました。2日間の様子を細かくレポートしてくださっています。最後までじっくりお読みいただけると嬉しいです。(事務局 飯島)

くると冬まつり拠点スタッフレポート その4 はるのさん編

アーティストプログラム in 神津島
『つくって、うたって、あるいて、おどって、大漁だ!!くると冬まつり2022』
12月3日(土)〜4日(日)拠点くるとにて開催。
この冬まつりは、ミュージシャン・テニスコーツをお招きし、2日間に渡りお祭りを一緒に作り上げていくテイストで行われました。


(1日目)
初日は「みんなおいで!おまつり準備」と題し、アーティスト、スタッフ、参加者が混ざり合い、自由参加のスタイルで、くると初の“手作りお祭り”を仕上げていく内容でスタートしました。開催中には、自然に音楽セッションが沸き起こるなど、アーティストプログラムでしか見ることの出来ない創造性豊かな時間を、多くの参加者と共有することができたように思います。

1日目最初のプログラムは「耳と目を澄ませ!あささんぽ」
見慣れた場所を、アーティストと一緒にお散歩したら、どんなことが起きるだろ
う、何を感じられるだろう?というのが発端のこの企画。ぎりぎりまで天気の心配があったけれど、当日は想いが通じたかのような、とても気持ちの良い天気となりました!

集合時間よりも早くどんどん集まって来た小学生たちを見て、楽しみに待っていてくれたことがわかり、とても嬉しく思いました。お散歩の参加者は下は2歳から、大人はパパ達も参加してくださり、賑やかな行列となりました。

いざしゅっぱーつ!

即興で奏でられるさやさんの歌と、植野さんのギターと共に、神津島の景色を楽しみながら歩くことは、五感をいっぱいに使う貴重な体験となりました。

ルートは浜→公園→細道→空き家ちょうべえ。

参加者はアーティストと一緒に、持ち寄った楽器や、漂流物・落ちていた葉っぱや竹などを鳴らしながら場所を移動していきます。見慣れた景色も、歩き慣れた道も、音楽と共に進むと、空間は緩やかに変化していき、見え方が少しずつ違ってくる。そんなことを新鮮に味わいながら、スタッフも参加者と一緒になって、それぞれがマイペースに楽しむ様子が伺えました。こども達は一見いつものように遊んでいるけれど、耳で聞くばかりではなく、アーティストの奏でるリズムや空気感を体で感じ取り、動き、共鳴しているようにも見えました。

午後はお祭り本番に向けて、くると神輿の飾り付けや、だるまの装飾、カラフルなタスキの衣装づくりを行いました。こどもも大人も、一緒になって熱中している様子が印象的だった1日目。「明日ねー!!」と楽しげに帰っていく子達を、嬉しく見送りました。



(2日目)
2日目はいよいよ!「くると冬まつり」本番です。お祭りプログラムはとっても盛りだくさん!4部構成で行われました。

【くると冬祭りプログラム】
1、くるとみこし
2、盆踊り
3、お楽しみ会
4、テニスコーツスペシャルライブ

1、くるとみこし
会場オープンと共に、続々と集まってきたこども達。すぐに楽器を鳴らし始めて自然とセッションが始まりました。前日に来た子はお気に入りの楽器をすでに見つけていたようで、すぐに手に取り輪に加わります。そこにさりげなくリードしながら寄り添うテニスコーツのお二人がとても印象的でした。

ひと盛り上がり楽しんだあとの空気は、わいわいと活気に満ちて、そのままひとつ目のプログラム「うたって、ならして、くるとみこし」が始まりました。まずはおみこしを完成させるベく、カラフルだるまに目を書き入れます。多くの参加者に見守られながら、テニスコーツのお二人が面白おかしく、目を書き入れてくれました。

カラフルだるまは、これまでに多くの人が絵を描き、貼るなどして関わり作り上げたものですが、元々は空家の片隅で埃をかぶっていたもの。この拠点が拠点となる前に、長い時間と背景があったことを教えてくれます。それが今こうして再び想いを持ってリメイクされ、祭りの中心となったことも感慨深く、思わず想いを馳せてしまいます。

みんなの手によって蘇ったカラフルだるまを、くると神輿に乗せて、いざ、神津式おみこしが始まりました。「わーっしょい!わーっしょい!」元気な掛け声と、好きな楽器で奏でる音が、賑やかに響き渡りました。

今回、お神輿を手作りするなんて本当にできるの?!という迷いを挟むまもなく、次から次に出てくるアイディアをどんどん形にしていったくるとオリジナル神輿。たくさんの参加者皆様のお陰で、デザインも意味合いも唯一無二の、とても温かさに溢れたものとなりました!


2、盆踊り
午後は「おどって遊ぼう!冬でも盆踊り!」
ここまでのプログラムにもそれぞれ着目したいポイントがありましたが、特にこの盆踊りは、アーティストプログラムという観点からみて、とても重要な実りの時間になったと思います。神津島に古くから伝わる民謡・大漁節を、島で三線を練習されている3名が演奏してくださり、そこに植野さんがギター伴奏で加勢!さらにさやさんが力強く歌い上げてくれました!そして子どもも大人もみんなで踊る!という、この機会で無ければ起こらなかっただろう、とても贅沢で貴重な大漁節が生まれました。

島の住人と来客者、島の歴史と文化、外から来たアーティストがしっかり組み合わさった瞬間でした。古き民謡を通して人々が繋がれたこと、そしてさらに新しくくるとバージョンが生まれたことは、ひとつのアートの形として、変え難い確かな力強さを感じました。この民謡を歌ったさやさんが「とても難しい歌だったーー」とおっしゃっていたのも印象的でした。スタッフとして、この瞬間に立ち会えたことをとても光栄に思い、忘れられない出来事の一つとなりました。


3、お楽しみ会
まだまだ続く!盆踊りの次は「お楽しみ会」
アーティストのお二人にお休みいただいている間に、スタッフが代わる代わる先導しながら、手遊び、こどもおどり、三線の演奏、クイズ、まねっこヨガ、大宝探しと盛りだくさんに行いました。くるとらしい賑やかさと笑い声が響く時間となりました。宝探しの景品には、スタッフお手製のどんブローチや、明日葉ブーケ、リアカーでぐるぐるしてもらえる券、スペシャル景品として、神津島の黒曜石博士からいただいた黒曜石や、アーティストにこの後のライブで名前を入れて歌ってもらえる券などなど、楽しいアイディア満載でした。


4 、テニスコーツスペシャルライブ
最後は、みんなお待ちかねのテニスコーツスペシャルライブです。
会場内を一度締め切ってセッティングを行い、さっきまでのワイワイ賑やかな感じとはムードが一変します。客席を組み、アーティストはサウンドチェック、スタッフは受付確認などを行います。神津島ではなかなかこのようなライブパフォーマンスは行われないので、この機会はとてもとても貴重です。少し前までと少し違う空気感には、何かが始まる緊張感と、訪れた人々の期待と興奮が入り混ざっていたように思います。

ライブはとても素晴らしいものでした。
初めてライブを体験する小さなこどもたちも、大人が驚くほどの集中力で見入っていた姿が特に印象的でした。自然に体でリズムを取り、一曲終わるごとに思わずスタンディングオベーションする子。掛け合いで歌うのが楽しすぎて、止まらなくなってしまう子。後ろの席から一番前で見たいと移動してきた子。これにはテニスコーツ のお二人も驚かれていたようです。
そしてもちろん大人も、テニスコーツの温かな楽曲に癒されて、日常をしばし忘れて、この特別な時間を楽しみました。

こんな豊かな時間を提供してくれたテニスコーツのお二人に、心から感謝しています。子どもたちの素直な反応は、パフォーマンスの素晴らしさと共に、2日間かけて少しづつアーティストと触れ合ってきたことで生まれた関係性であったかもしれません。島で生活していると、出会いはどうしても限られてしまう傾向にあります。このような出会いや思い出が、今すぐ何かに繋がるわけではありませんが、この日体験した空気感は、感受性や、好奇心、創造性を刺激したことは間違いないと思います。



離島という立地と、コロナ禍であることが相まって、より人と人との距離が空いた昨今。出会いの場の貴重さと、心の交流の必要性を改めて感じています。

感染対策に気を使いながらも、今回くるとオリジナルの冬まつりには2日間を通じて約100人の方が参加してくれました。コロナ禍でやむおえずイベントの中止が続いて早3年。お祭りを知らずに大きくなっている子どもや、移住者で神津島の文化に触れられずにいる方々も多くなる中、手作りながら、おみこしや盆踊り、神津島の民謡と、素晴らしいライブパフォーマンスに触れられる機会をつくれたことは意義のある事と感じ、この企画に携わっていただいた多くの方々に、心から感謝申し上げます。

拠点スタッフ はるの