• 薮田進(やぶたすすむ)さん
  • 年齢|69歳
  • 職業|レストラン経営/シェフ
  • 島在住|2年目
  • 出身地|京都府宇治市

 

  • 薮田登美(やぶたとみ)さん
  • 年齢|70歳
  • 職業|レストラン経営
  • 島在住|2年目
  • 出身地|京都府宇治市

 

 

―最初に神津島に訪れたきっかけは?

進さん:京都でレストランをやっていた頃、たまたまお店に来てくれたのが、ここの(神津島の旅館「さわや」)のオーナーだったんですよ。とても意気投合して、「今度、うちの島においでよ」って誘ってくれて。

登美さん:お店をやっているとなかなかお休みがとれないから、「本日研修のため」って張り紙して神津島に行ったのよね。戻りの日も決めずに(笑)。

進さん:そうそう。それで釣りをしてみたら、魚が簡単にかかったんですよ。それがもう、嬉しくて嬉しくて! それから約8年、釣り目的で毎年のように島に通っていたんです。

 

ーなぜレストランを島に移転することに?

登美さん:夫が40歳で公務員を辞めてレストランをはじめてから、京都府内で飲食店を4店舗経営し、とにかく働いてきました。でも私達も歳だし、いつかはお店を閉めないといけない。ほそぼそと続ける方法があったら良いのになって考えていたんです。

進さん:京都はどんどん観光客が増えて、ゆっくり料理を出せる感じじゃなくなってきたしね。忙しかった。疲れた。そんなときに「さわや」が休業することになり、オーナーに「うちで料理出したら良いのに」って言われて。2年ぐらい悩みましたよ。でも結局、1年かけて京都の店舗を畳み、移住しました。

 

ー今も毎日釣りに行ってますか?

進さん:もちろん。最高ですよ。毎日、海まで歩いて釣りをしています。お客さんも1日に1~2組ぐらいだとちょうど良くて。だいたい島の人は「今開いてる?」って電話をくれるから、「やってますよ」って答えて、釣り竿たたんで店に戻るんです(笑)。

登美さん:島の人はどこに行っても声かけてくれるし。親戚でもない私達に対しても協力的で感激しています。ただ最初は屋号など島の風習がわからなくてちょっと困ったり。最近ようやく慣れてきました。あと、やっぱりちょっと不便なところはありますね。

進さん:そうかな? まあ、悪天候だと船が出なかったり困るけど、食材の仕入れも業者に電話一本で済むし。そんな不便でもないでしょう。

登美さん:送料は結構かかってるわよ(笑)。

進さん:うーん、そこはね、ちょっとね。和牛だけはどうしても島で調達できないからなぁ。ここの魚の美味しさに負けないお肉を使いたいから仕方ない。

 

ーこれからやってみたいことは?
進さん:島の魚の美味しさをもっと島の人に知ってもらいたい。島の人は基本的に刺し身で魚を食べるけど、生だと「不味い」と敬遠される魚種も、燻し焼きにすると美味だったりするんですよ。そういう料理の可能性を広めていきたいですね。

登美さん:そのためにうちはシェフがお皿を持って出て来るんですよ。みなさんの質問を受けられるように。

進さん:そう。料理を通したコミュニケーションを大切にしているんです。

 

 

執筆:中田一会(きてん企画室)
写真:川瀬一絵(ゆかい)