島で「幸せなターン」をしている人々にお話を伺い、その物語を共有する『HAPPY TURN/神津島 通信』。
今回は、卒業論文の研究で神津島を訪れた立教大学4年生の佐藤菜月さんが、サーフィンをするために島に移住し、神津島漁業協同組合で働く本田拓也さんにインタビューしました。離島の I ターン者が移住を決意した理由やその暮らしの実態について研究していた佐藤さんが、インタビューを通して感じたこととは?最後まで是非ご覧ください。
~大学4年生がインタビュー~
「大切なのは、自分がどう生きたいか。」
サーフィンに魅せられて移住した若者の今とこれから
名前|本田拓也(ほんだ たくや)さん
年齢|25歳
職業|神津島漁業協同組合
移住歴|3年目
出身地|福島県福島市
移住するまではどのような生活をしていましたか?
福島県福島市で生まれて、高校生までずっと地元で過ごしました。高校時代に出会った部活の顧問に憧れてからずっと体育の先生になりたいと思っていて、千葉の大学のスポーツ系学科に進学しました。
小さい頃からサッカーをやっていて、大学でも体育会に所属していたのですが、2年生の時に辞めて、その後は普通の大学生活を送っていました。
本田さんの人生を変えた、サーフィンとの出会いについて教えてください。
ちょうど、部活を辞めた大学2年生の冬でした。小さな頃からずっと熱中していたサッカーを辞めてから、毎日を何となく過ごす日々が続いていました。でも、そんな時にたまたま九十九里浜に訪れる機会があって、そこで大学の友人2人がサーフィンをしているのを見かけたのがきっかけです。そこから2人に誘ってもらって一緒にサーフィンを始めたら、どんどんのめり込んじゃって。一人でも色んな所へサーフィンをしに行くようになりました。そこで訪れた場所の1つに新島があって。その時に島っていいな!と思いました。
なぜ神津島に移住しようと思い立ったのですか。
教員を目指して勉強をしている中で、4年次に教育実習に行きました。いざ現場に立ってみると理想と現実の大きなギャップに悩むようになりました。その後、民間就職に切り替えたものの就職活動に悩み、自分が何をしたいかを考えた時に、今熱中しているサーフィンを極めたい、という想いが湧いてきました。海に囲まれた土地で、新卒で働くことのできる環境を探した結果、神津島にたどり着きました。正直言うと、神津島だったのはたまたまですね(笑)
移住を決断する際、葛藤はなかったのですか?
実は、全くありませんでした。周りの大学の友人たちはみんな大企業や公務員に就職する中で、自分は大学を出なくても就くことのできる今の仕事を選びました。「お前はそれでいいのか」と、大学の友人や教授に言われたこともありました。だけど、そんなこと、全く気にならなかった。俺は、自分の理想を実現することが一番重要なことだと思っています。それを叶えられる環境こそが神津島にあった。だから、今も全く後悔はないんです。
神津島での生活について教えてください。
まさにサーフィン一色です。まず朝早く起きて、サーフィンへ出かける。朝5時に市場に出勤して、魚を卸すなどの作業を行います。お昼休憩には、食事の時間も惜しんでサーフィン。午後の作業を行い、終業後もそのまま海へ足を運び、夕暮れまでサーフィンをします。そんな生活を2年以上続けてきたお陰で、かなり上達しましたね(笑)
神津島の魅力を教えてください。
まずは、年中サーフィンができる環境。これは、元々自分が求めていたものだったからね。あとは周りの人が大きいかな。神津島の男性たちはいわゆる、昔ながらの“漢”のような人が多いです。例えば、力仕事は率先してやるとか。そういう姿がかっこいいな、と思います。島の方言で「めづらい」(=格好悪い)という言葉があるのですが、自分も神津の人たちのように、“めづらい”ことをしない生き方をしたいと思うようになりました。
これからの目標を教えてください。
神津島に移住する時に立てた「サーフィンを上手くなる」というのが今後も目標です。来た時よりは上達しましたが、もっともっと上手くなりたいと思っています。間近の目標としては、サーフィンの大会への出場や、検定に合格することですね。ただ、そうなると神津島で今の仕事をしているままでは(時間的にもアクセス的にも)厳しいとも思っています。それから、大学時代に留学したいと考えていた時期もあったから、いつかは海外にも行ってみたい。やりたいことはたくさんありますね。
「サーフィンをしたい」という気持ち1つで島への移住を決めましたが、島に来たからこそ得られた経験や、知ったこと、考えたこと、たくさんの人との出会いがありました。だからこそ、この先もいろいろな経験をしてみたいと思っています。なので、1つの場所にとらわれず、柔軟に、自由に生きていきたいというのが今の正直な想いです。
【インタビューを終えて】
佐藤菜月
大学を卒業したのちに新卒で身一つ、神津島という馴染みのない土地に足を踏み入れた本田さん。彼を突き動かしたのは、“自身の熱中しているものを極めたい”という純粋な強い意志でした。
ちょうど私自身も昨年の春に就職活動を終えたばかりで、当時の葛藤を思い出しながらお話を伺いましたが、本田さんの堂々とした語りから感じる強い意志と自信、好きなことに没頭する姿には、ただただ圧倒されるばかりでした。今回のインタビューを通して学んだことは「大切なことは、自分がどう生きたいか」ということです。そして、その答えは自分の中にしかなく、他人と比較したり固定概念にとらわれたりしたままでは、決して得られないものだという気づきも得られました。
私は今年の春に大学を卒業し、社会人になります。これからたくさん悩んだり、選択を迫られたりする場面が出てくると思いますが、「自分がどう生きたいか」という問いに正直に、後悔のない日々を過ごしていきたいです。
記事:佐藤菜月(立教大学4年)
サーフィン写真提供:大久保夕馨
編集・写真:飯島知代(HAPPY TURN/神津島)
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